翌日、呂が来た。
朋春に「あなた、世のため、人のため、と書いてましたね?何かしたんですか?」
朋春は必死に訴えた。「数え切れないほど、自分を捨ててやってきました。テレパシー
で、」
「もう、いいです。本当に人のために役立つ気持ちありますか?」
朋春は弾かれたように答えた「はい!」
すると呂は部下らしき男たちを呼び、何か指示を与えた。
部下は朋春を引き立てる。「どこに行くんですか?」朋春は不安の中に問うた。
部下の「余計な事を喋るな!」の声に言葉を呑み込んだ。
船内病院らしき所に個室の病室があり、そこには顔が土色の老人が横たわっていた。
「見てください。あの老人は党の功労者です。あのままでは半年ともたない状態で。」
朋春は「あのー、私の気のパワー目的だったんですね?残念ながら私は気功治療の能力
はないので・・・」
呂は苦笑いしながら「三浦さんに医療気功はあてにしてないし、何ら能力がないのは
承知しております。」
朋春は怒りを感じたが、ここは強気に出ると危険と自分をなだめた。
呂はそんな朋春の心中を見透かすように言った。
「あなたなら、あの老人を助けられます。」
室内の老人は朋春に軽く手を上げ、何事か声を掛けたように見えた。
呂は「宜しく頼む。感謝する。と仰っておられます。」と嬉しげに朋春に言った。
朋春は混乱と極度の不安にいた。
もとの部屋に戻され、扉が閉まる間際、呂は呟くように言った。
「せいぜい体調を整えておいてくださいね。」
呂の言葉の意味を推し量りながら、朋春は怯えで体を震わせた。