「償い」 さだまさし
ランク戦になると ゆうちゃんは毎試合ベルファストで出続けて
 必ず島陰の側で煙幕を焚いてレーダー照射するのだった
 仲間はそんな彼をみてみんな煙幕射撃が趣味のしみったれた奴だと
 飲んだ勢いで嘲笑っても ゆうちゃんはニコニコ笑うばかり

 僕だけが知っているのだ 彼はここへ来る前にたった一度だけ
 たった一度だけ哀しい誤ちを犯してしまったのだ
 魚雷を射ったその瞬間 前方の味方の艦影に 警告が間にあわなかった 彼はその日とても疲れてた
 
  noobTK あんたを許さないと 彼をののしった 被害者のコロラドの涙の足元で 
彼はひたすら大声で泣き乍ら ただ頭を床にこすりつけるだけだった
 
  それから彼は人が変わった 何もかも 課金して ベル買って 働いて
  償いきれるはずもないが せめてもと 毎日敵の駆逐をあぶり出している

 今日ゆうちゃんが僕の部屋へ 泣き乍ら走り込んで来た しゃくりあげ乍ら 彼は一通の手紙を抱きしめていた
 それは事件から数えてようやく3ヶ月目に初めて あのコロラドから初めて彼宛に届いた便り

 「ありがとう あなたの優しい気持ちは とてもよくわかりました
  だから どうぞ煙幕はやめて下さい あなたの煙りを見る度に
  燃やされるのを思い出して辛いのです あなたの気持ちはわかるけど
  それよりどうかもう ランク戦のバランスをもとに戻してあげて欲しい」
 
  手紙の中身はどうでもよかった それよりも  償いきれるはずもない あの人から
  返事が来たのが ありがたくて ありがたくて ありがたくて ありがたくて ありがたくて
 
  神様って 思わず僕は叫んでいた 彼は許されたと思っていいのですか
  明日もランク戦へ通うはずの やさしい人を許してくれて ありがとう
 
  人間って哀しいね だってみんなやさしい それが傷つけあって かばいあって
  何だかもらい泣きの涙が とまらなくて とまらなくて とまらなくて とまらなくて