「どけ、俺にやらせろ」
後ろでもたもたしていたDW2を45トンの車体で押しのけ、側面に旋回する。
続けざまに2発目が着弾し、装填手を負傷させる。あまりの衝撃に砲塔が吹っ飛びそうになる。
血が滾るのを感じた。これから始まる競り合いが己を満たしてくれる、そう確信した。
いつ死んだのかもわからないような連中の残骸を盾にして弱点を隠す。それから角度をつける。
KV-1は落ち着いていた。灼けるような砲身とは裏腹に、驚くほど冷静にレティクルを絞った。
そして発砲。122mmHEATはChurchillに直撃する。はずだった。
Churchillは的確に車体をコントロールし、122mmHEATを弾く。強制跳弾だ。
砲塔が上手く動かない。最初の一撃がここにきて効いているのだ。さらに次弾の装填には20秒かかる。
初めから狙ってやったのだとしたら相当な手練だ。舐めてかかってはこちらがやられてしまう。
砲塔側面にじわりと汗が滲む。
こちらが発砲できないのをいいことにChurchillの砲身から3発目、4発目の弾丸が発射される。
卓越した技術の前にKV-1の自信と装甲は脆くも崩れ去る。
KV-1は必死だった。なんとか装填を済ませ、Churchillが次に姿を現すのを待つ。
あと1発はなんとか耐えられるだろう、発砲の瞬間わずかに現れる砲身を狙うしかない。
3発目で操縦手をやられたので距離を詰めることはできない。この砲身で当てなければやられる。
できなければ死だ。

――ほどなくして、冬のヒメルズドルフに2発の砲撃音が鳴り響いた。