530 名も無き冒険者 (ワッチョイ c3fb-lsIp [180.32.52.194]) sage 2016/10/12(水) 16:37:45.73 ID:Zvzq9QNN0
プロホロフカの丘の上、M44は絶望していた。
あれだけ居たはずの快速車両が全滅してしまったからだ。
「揃いも揃って無能どもめ」
無線で拾われないように小さく悪態をつく。もっともソ連の無線にその心配は無用だが。
残ったのは瀕死の重戦車が数台、自走砲がもう一台、それにAMX 40。
戦力はやや勝っているようだが、問題はそこではない。敵を発見できないのだ。
この広い草原を重戦車に行かせるのはどう考えても無理がある。最初に視認するのは天国だろう。
本人達もそれをわかっているようで進軍する気配は無い。
AMX 40も居るがとても無理だ、その鈍足ゆえに戦火を免れたようだが戦力にはならないだろう。
仕方なくAMX 40が先陣を切ったようだが軽戦車とは名ばかり、同じ結末を迎えることになる。
未来ある若者の死を想うと辛い。これが戦争なのだ、とM44はため息を漏らした。
じりじりと距離を詰めるAMX 40、そろそろ発見されるだろうか。M44は思わず目を逸らした。

3秒後、M44は目を疑うことになる。2台、3台…いや、まだ居る。
続々と敵がスポットされ、布陣が明らかになった。
すっかり諦めていたM44は慌ててレティクルを絞った。
AMX 40が瀕死のhellcatを仕留めた。虚を突かれた敵は混乱したようだ、明後日の方向に砲塔が向いている。
Leopardなど状況も忘れて逃走している。私を探しているのか?
続けざまにKV-2が一発、Grilleも当てたようだ。もちろん私もO-I相手に外すことはない。

����M44はガレージでは無口な方だが、その日の夜はたまらず声をかけた。
「一体どうやった?」
「稜線と茂みを上手く使ったのさ。あの辺りの地形は頭に入ってるんでね」
その手には古ぼけた双眼鏡が握られていた。