何故こんなところに来てしまったのだろう。
プロホロフカ西方、遮蔽物のない平原で、仕方なく持ち込んだはずの双眼鏡で観測しながらB1は考えていた。
アテにしていたM5 Stuartがこちらに来る気配はない。支援する気など初めからなかったのだ。
こちらの戦力が東側に集中しているのを確認したLuchsが意気揚々と乗り込んでくる。後ろにHellcatが控えているのだろう。
まだ幼いAMX 40が恐怖で震えている。無理もない、この子はまだ履帯すら開発していないのだから。
迫り来るLuchsのエンジンは轟音をあげ、時速は40kmを超えた。
まだ距離はあるが皮膜レンズを装備している可能性も考えると時間がない。
「AMX 40、よく聞きなさい」
「ここから少し南西に行けば稜線に隠れられる。そうすればやり過ごせるかもしれないし、もし見つかっても東の戦力が支援してくれるだろう」
「まだ間に合う、早く行きなさい。なぁに、お前は父さんと違って丈夫な子だからなんとかなるさ」
AMX 40は頷き、車体を旋回させた。おどけてみせたB1に砲塔を向けることさえできなかった。
AMX 40の時速が10kmを超えたのを見届け、覚悟を決めたB1は車体を旋回させ、側面を曝け出した。
「アイツ…まさかAMX40を守るために囮になるつもりか?馬鹿なことを…」
一応レティクルを向けておいたM41 HMCがため息を漏らす。

はみ出た車体に気付いたLuchsがB1に砲塔を向ける。
ほどなくして、この世のものとは思えない砲撃音が鳴り響いた。

味方(B1)が敵車両(Hellcat)の攻撃により大破