日曜の朝、県内某所
ポケGOトレーナーたちが集まる小さなサイトのオフが開かれようとしていた
集合時間10分前、既に来ているメンバーは7人
その輪の中へ、俺はスマホを持って飛び込んだ

「おはよう!カイロスキッドです!今日はよろしく!」
お気に入りのカイロスを見せながら、元気よく自己紹介する
「...あ、おはようございます」
「カイロスキッドさんって高校生なんですよね?若いですね...」
なぜか皆の視線が泳いでいる

「遅くなってスイマセ〜ン!」
青いフードを被ったオッサンが満面の笑みでやってきた
「幹事のカビゴンオヤジです。今日は皆さんよろしくお願いします」
この妊婦のような腹をした人が今回のオフの主催者であり、サイトの管理人でもあるカビゴンオヤジさんだ

「あ、どうも!カイロスキッドっす。よろしく」
俺が挨拶をすると、カビゴンオヤジは眉間にシワをよせて、俺のスマホをジロジロと覗きこんできた
「え〜っと...カイロスキッド君だっけ?君さぁ、今日何しにくか知ってる?」
「え...?東京に遠征してレベル10のジムを陥落させまくるっていうジムバトルオフっすよね?」
「ジムバトル…。で、君のポケモン、それクワガタだよね?」

何が言いたいのかわからない。カイロスを馬鹿にされた気がしてイラっときた俺は言った
「何が言いたいんスか?」
「みんなカビゴンなんだけど…クワガタじゃ無理だと思うよ?」
「…大丈夫っスよ!地元のジムでは無双してるから皆さんに迷惑かけないくらいのバトルはできますし」
爆笑の渦が起こった。そしてカビゴンオヤジは苦笑いしながら言った
「東京のレベルはグンマーとは違うんだよ。それにそのクワガタ見てごらん」
視線を落とす。そこにはCP1000が限界のメーターがあった
「東京のジムはCP2000越えが普通にいるからね。君のクワガタじゃ役に立たないよ(苦笑」

俺は泣きながら家に帰ると、そのまま枕を濡らして眠ってしまった
翌朝目を覚ますと、パソコンの電源を入れてあのサイトを覗いてみる
そこの掲示板には、昨日のオフを楽しそうに振り返るメンバーたちの書き込みがあった
俺は偽ハンドルネームを使って『カビゴンオヤジ臭ぇんだよ!死ね!』と書き込む。
すぐに管理人からのレスがあった
『カイロス君だね。当サイトのルール通り、君をアク禁にします』