平日の朝、通勤通学の人々でごったがえす郊外のターミナル駅。

我先にと言わんばかりに殺気だった人の流れに逆らい、ただ1人反対方向に向かう男性。

その先にはスポンサージムがあるが、その中途半端な立地から人の集まりが悪く、地元トレーナーから敬遠されていると言う。

そんなところになぜ向かうのかと言う我々の質問に対して男性は目線の先に見える店の看板を見つめながら話し出した。

「お店に人が来ないと誰だってスポンサーやる意味ないって思うじゃないですか。そうなるとナイアンさんにクレームもいくし、ポケモンGOも大したことないとか言われると思うんですよ。
そこまでならまだ許せるんですけど、それが変な噂とか偏見に繋がって…、ようやく増えたジムが突然消えたら最悪じゃないですか!」

店前に着いた彼はあたりを見回しながら話を続ける。「そんなことになったら後で絶対後悔するし、ここで無駄にレイドパスを使ったトレーナーの人がうかばれないなって思うですよね…」

一瞬口を噛んだ表情を見せると彼はおもむろにジムをタップし無料パスを受け取ると、なぜかレイド戦には加わらずジムを退出した。

「スポンサー対策は回せば十分なんですよ。この時間で待機3とか俺が仕切ったところでね。今日はもともと次行くジムから参戦するってラインしてるんで、あっちにぼちぼち集まりだしてると思います」

そう言うと彼は周りに軽く会釈し、もと来た道を颯爽と戻っていった。