「うん。で、君のポケモン...それ、カ、カイロスだよね?」
「ダメなんだよ。みんな10キロ卵からカビゴンやラプラスの孵化を楽しみにこのオフに参加してるんだよ。なのにその君の連れてるポケモンをもう一度見てごらん」
「10キロ卵の大ハズレポケモン、それがカイロスだからね。何ていうか縁起が悪いんだよね。それに、その、なんか腐葉土臭いし(苦笑」
『カイロス君だね。当サイトのルール通り、君をアク禁にします』
・・・・・・・!!
「うぅ…夢か…」
俺はあれからほぼ毎晩のように、あの日の悪夢にうなされている
時計を見ると、午前0時をちょっと過ぎたころだった
冷たい水で顔を洗うと、ベッドに腰掛けてため息をつく
「俺のカイロス…10キロ卵だけど…本当に弱いのか?」
夢に出てくるラプラスに乗ったあのオヤジは、いつも俺のカイロスをバカにしやがる
だがどうしても俺にはカイロスが弱いポケモンだとは思えなかった
カイリキーと並んでも負けない堂々としたスタイル
両角が生んだパワフルなはさむ
トレーナーの意志と共鳴する高速れんぞくぎり
こんな素晴らしいポケモンが、どうして世の中に認められないのか?本当にラプラスに勝てないくらい弱いのか?
そりゃカイリューと比べれば、少しは弱いのかもしれないが…
「そうだ!」
頭の中にひとつの提案が浮かんだ 『カイロスが強いってことを証明してやる!』
そう決めた俺は、着替えてリュックとモンスターボールを持つと 家族が起きないように静かに家を出た
原付に跨ると、あの場所を目指して走り出す
カイロスの実力を試す場所、俺とカイロスの魂が一つの壁に挑戦する場所、ジムタワーへと…
ウインカーを点滅させ真夜中の公園へと進入していく
もちろん10キロ卵からラプラスが滅多に出ないことは知らない訳じゃない
だけどこれは、俺とカイロスの挑戦なんだ
もう戻ることなんかできない
ジムへ近づき闘志を全開でジム戦へ
「行くぜ!カイロスの実力を証明してやる!」
初めて登るジムタワー
だが親父のカイリューを何度も見ているので、どういう場所かは理解している
技ゲージの値はまもなくMAX指そうとしている
しかし、しねんのずつきやソーラービームでHPが削れていく
やっぱりカイロスは弱いのか…いや、違う!まだ実力は発揮されていない
「まだだ!カイロスはこんなもんじゃない!」
前傾姿勢になると、前方を遮るナッシーを睨みつける
行ける!はさめる!倒せる!
ここからは一瞬が勝負の世界だ
右上のゲージを見て、遠距離からのソーラービームがないことを確認する、れんぞくぎりを出す、そして目視 素早く避けると、技ゲージを貯め両角のパワーを開放する
「はさめぇぇぇぇぇ!!!!!!」
再び連続切り!ゲージ貯め!そしてはさむ!
カイロスがナッシーに勝利した瞬間だった
そのナッシーのcpは1700ある。TL19ラプラスよりも上だということだ。そのナッシーに勝ったということはつまり カイロスは、ラプラスより強いということになる
激しいバトルを終えた俺は 公園の外にある牛丼屋の看板を見つける
「少し休もうかカイロス…」
深夜の牛丼屋は静寂に包まれていて 戦士が休息を取るには最適な場所だった
「俺たち勝ったんだぜ。お前も疲れただろ?ちょっと休もう」
ほぼひんしのカイロスを電柱に繋ぐと建物の中へと入り、カウンターで牛並みつゆだくを注文する
さっきのバトルで、かなりエネルギーを消費したから栄養補給だ
あとでカイロスにもキズぐすりを奢ってやろう
今日は頑張ってくれたから、特別にすごいキズくすりを与えてあげよう
そんなことを考えていると、おばちゃんから声がかかる
「お待たせ致しました牛並みつゆだくになります」
熱々の牛丼を頬張っていると、誰かが俺の肩を叩いた
振り返ると警察官が二人、俺を見下して立っていた
「君未成年?あとあっちに繋いである昆虫は君のか?」
「…高校生です。…昆虫というか、カイロスっスけど…」
「ちょっと来い!」
食べかけの牛丼を残し、俺はパトカーのほうへと連行された
午前6時、連絡を受けた親父が警察署まで迎えに来た
そして殴られた