任天堂の家庭用ゲーム機「ニンテンドースイッチ」が発売2年目を迎えた。
爆発的な人気で世界で品切れが続いた「スイッチ旋風」は一段落し、2018年度は2000万台の販売を目指す。ただ、目標達成には「ソフトが足りないのでは」との懸念がくすぶる。1年目の勢いを持続できるか。

それでも発売2年目のスイッチの勢いを占う上で、4〜6月の販売台数は重要になる。というのも、年末商戦に向けて任天堂が用意しているゲームソフトだけでは、4月末に発表した2000万台という目標の達成には「弾(ソフト)不足じゃないか」と見る関係者が多いからだ。
昨年は3月にスイッチを発売すると同時に「ゼルダの伝説」、4月に「マリオカート」、7月「スプラトゥーン」、10月「スーパーマリオ」と、人気ソフトを惜しみなく投入し、勢いに弾みを付けてきた。

「ソフトがハードをけん引する」とする同社の狙い通り、18年3月期の売上高は前の期比2.2倍、営業利益は6倍に拡大し、任天堂の復活を世界に印象づけた。

しかし今年は大型ソフトが下期に集中する。11月に「ポケットモンスター レッツゴーピカチュウ・レッツゴーイーブイ」、
12月にキャラクターを総動員した「大乱闘スマッシュブラザーズスペシャル(スマブラ)」を投入するが、マリオや星のカービィなど人気ソフトは出尽くしている。


6月に就任した古川俊太郎社長は「スイッチの勢いを加速させ、ビジネスを拡大させる」と話すが、
いきなり正念場を迎えそうだ。スイッチ向けの部品を製造しているメーカーは、2000万台を下回る前提で生産計画を立て始めた。

ある部品メーカーは「スイッチ2000万台という目標は、新社長のための打ち上げ花火でしょ」と冷ややかだ。
別のソフトメーカーは「スイッチが本当に売れるゲーム機か、もう少し見極めたい」と慎重な見方を示す。

任天堂の強みはハードとソフトを一体開発できること。独創的なゲーム機を生み出し、その特徴を引き出すソフトを組み合わせ、家族や子どもを取り込んできた。

一方で、外部のソフトメーカー(サードパーティー)を巻き込むことには苦戦してきた。
据え置き型ゲーム機として1億台超を売り上げた06年発売の「Wii」も、発売3年目以降、他社製ソフトをそろえられずに急減速した。

そこでスイッチは中小ソフトメーカーが制作する「インディーゲーム」を取り込むため、汎用の開発ソフトに対応。スマホやPCゲームを制作するメーカーがスイッチ用に投入しやすくした。

任天堂も開発費を支援し、今春から週20〜30本のインディーゲームが発売され始めた。任天堂の主力ゲームが6000〜7000円するのに比べ、500〜2000円と安い。手軽に遊べるゲームは携帯型のスイッチと相性が良く、年末までの穴埋めを期待する。

9月に開かれる見本市「東京ゲームショウ」にも初めて商談用ブースを設ける。
昨年は担当者がソフト各社のブースを回りスイッチ向けの開発を相談していたようだが今年は専用ブースで幅広く募集する。
着脱式コントローラーを使うスイッチの特性を生かしたソフトを開発する大手メーカーも出始めたが、発売時期は19年以降になりそうだ。

任天堂が打ち出す世界観にサードパーティーをどう巻き込むか。古川社長は難しいかじ取りを迫られている。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33590360Q8A730C1X11000/