宮本 ふつうに仕様を出すと「それは無理です」って言われるようなことも、原因を探っていくと、
できるような形が見えてきたりします。
たとえば、ピクミンの仕様を出すとき、「ピクミンはいろんなものを自分で考えて巣に運ぶ」というと、
中間に入ってるディレクターは「それはたいへんです、そんな簡単にはできないです」って答えたりするんですけど、
「網の目のようにルートを引いておいて、最短のルートを検索できる?」って訊くと、プログラマーは意外と
「あ、それならできます」って言うようなことがあるんですよ。

糸井 ああーーー。

宮本 そういうふうに、「一見、できそうもないアイディア」を形にしていくというのが、ぼくがそのチームにいる、
いちばん大きな意義じゃないかな。

糸井 それはあれですね、
優れた絵描きが、ふつうはとても描けないようなシーンに出会ったときに「これなら描けるかな」
って思えるようなことですね。
たとえば、北斎の波の絵はさ、北斎自身は「これはこうすれば描けるだろうな」って思ったわけでしょ。

宮本 うん、そうですね。

糸井 それはやっぱり、北斎が「絵」というものを知っているからわかるんでしょうね。
だから、宮本さんも、コンピュータやプログラムを全体としてつかんでいる、というか。

宮本 なんでですかね。
と言っても、プログラマーがすべてつくってくれるわけで、その人しだいなんですけどね。

岩田 宮本さんは、コンピュータでどうプログラムを書くかといった細かいことはあまりご存知ないと
思うんですけど、コンピュータはどういうことは得意で、どういうことが苦手だっていう理解は
非常に的確なんですよ。

糸井 ああ、なるほど。

岩田 だから、たとえば、「できない」って言うプログラマーがいたときに、「なんとかしなさい」って言うんじゃなく、
「どういう仕組みになってるの?」って訊くんですね。
すると、仕組みを説明されるので、「じゃあその仕組みをこう利用したらこういうことは
できないの?」って提案すると、「それならできます」ってなるんです。

宮本 そういうことを繰り返してますね。

糸井 で、それ全体が経験になって、つぎの機会に「これならできるんじゃない?」っていうふうに活きていく。

岩田 はい。

糸井 なるほどー。