岩田 『ピクミン』というゲームがまさにそうなんですけど、一個一個の動きや仕組みはシンプルなんです。
ところが、それら全体が破綻なく動く、となると、すごく難しくなる。
コンピュータも、一度には単純なことしかできませんが、それらの単純なことを組み合わせて複雑な処理をするように
仕上げるのが、プログラムのおもしろさであり、難しさなんです。

宮本さんは、ゲーム全体を動かすためのプログラムの設計をしているわけではないんですけど、一個一個のシンプルな
仕組みについては、だいたいどういうことなのかそうとう正確にわかっていると思います。

糸井 はーー。

岩田 なんていうか、やっぱり、原理と機能をわかってしゃべってる人なんですね、宮本さんは。
だから、プログラマーとやり取りできるんですよ。自分がやりたいことを実現するために、
「できない」と思い込んでいるプログラマーのかわりにどうすればできるかを提案できるんです。
そういうゲームデザイナーってそれほど多くはないんじゃないでしょうかね。

糸井 それは、やっぱり、やりたいことが先にあるから、必然的にそうなるんでしょうね。
実現させたい、という気持ちの強さが道を拓くというか。

宮本 そうですね。
「こうしたい!」っていうゴールさえあれば、誰がどこでなにをする、というのを積み上げて、いちばん単純な構造がつくれますから。

糸井 うん、うん。

宮本 だから、なんというか、ゴールを決めれば、だましだましでもそこへ行く方法はあるんですよ。

糸井 無謀なゴールでもなく、できる範囲におさえたゴールでもなく。

宮本 そうです。そういう、ほどよいゴールを決めて、どうしたらできるのかということを考えさせると、
ぼくはたぶん、早いと思います。

糸井 「早い」んですね。そうかー。