XboxによるActivision Blizzard買収が独占禁止法違反となる可能性は低い――法律の専門家が語る


マイクロソフトによるActivision Blizzardの買収で、ゲーム業界の最大手企業が、業界をリードする開発会社を吸収することになる。Xboxによる大型買収戦略が続いているが、Activision Blizzardの買収は独占禁止法に抵触しないのだろうか? 法律の専門家によると、現段階では問題ないだろうとのことだ。

独占禁止法の問題にぶち当たることなくXboxがベセスダの買収に成功した事例を覚えているだろうか。この買収がうまくいったのは、Xboxのようにコンテンツを配給する会社と、ベセスダのようにコンテンツを生産する会社との間で行われる垂直統合という形態をとっていたためだ。


サンフランシスコを拠点とするメディア/テクノロジー関連の法律事務所Gamma Lawのマネージングパートナーであるデヴィッド・ホップによると、XboxのActivision買収でも同じ原則が当てはまるという。


「今回の買収はいわゆる『垂直統合』の一例であり、コンソールのメーカー(配給者)がゲーム開発会社(生産者)を買収する形になります。もちろん、今回の例はゲーム業界におけるそういった取引の中でも最大のものですが、アメリカの裁判所は歴史的に見て、垂直的取引に対して独立禁止法を適用することに前向きではありません」

確かに歴史的に見て米司法省が、XboxとActivisionの取引の結果として起こり得るようなコンソール独占について問題視したことはない。

一方で、Xboxもまたゲーム開発会社だと考えられれば、今回の取引が「水平型」買収、つまり直接的に競合していた2社が統合したものとみなされる可能性はある。ホップによると、「『生産物』がビデオゲームのようにクリエイティブな作品である場合、ひとつひとつの作品がオリジナリティを持っていると捉えられるため、直接的な競合相手には当たらないとされ、法律的に競争原理を適用するのは困難です」

業界の集約はあらゆるエンターテインメントの選択肢が何らかの形でお互いに競争することを意味するが、ホップの説明では「今回の買収によって、例えば消費者にとってシューターゲームの選択肢が減少したことを根拠に、独占禁止法の事例として取り扱うといったことは、現段階では荒唐無稽といえるでしょう」とのことだ。

実際、モバイルゲーム分野におけるXboxの存在感のなさは、今回の買収における戦略的利点について話し合った際、Activision側が提示した根拠のひとつだろう。Activisionはモバイルゲーム開発会社のKingを所有しているからだ。


ホップによれば、このような取引は法律的には問題がないとしても、この規模の統合であれば業界にとって悪影響を及ぼす可能性があるという。そして現段階での明確な勝者は「Activisionの幹部ということになるでしょう。社の存在を脅かすほどの巨大な危機から注意をそらせる上に、豊富な退職金をちょうどいいタイミングで受け取れることが確約されたわけですからね」と語った。

XboxによるActivision Blizzardの買収は2023年6月に完了する予定となっている。

https://jp.ign.com/xbox-series-x/57223/news/xboxactivision-blizzard?amp=1