任天堂、Switch1億台超え メタバースがライバルに

さらにメタバースに代表される新たなライバルの出現も懸念材料だ。米メタ(旧フェイスブック)のマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は「ゲームがメタバースに足を踏み込むきっかけになる」と述べ、同社製VR(仮想現実)機器向けゲームソフトを拡充する方針を掲げる。

「着実に研究を進め、市場動向を見ながら(メタバース向けゲームを)投入したい」(カプコンの野村謙吉取締役)など、メタバース参入に前向きな国内ゲームメーカーも少なくない。

古川社長はメタバースについて「大きな可能性を感じるが、(VRを活用して)どのように新鮮な驚きや楽しさを伝えられるか、定義するのは難しい」と述べる。

任天堂が得意とする「体を動かす直感的な操作」というコンセプトはVRゲームと競合する。今後VRで有力ゲームが登場すれば、ゲーム需要を奪われる恐れがある。さらにゲームメーカーがVRに開発の軸を移せば、任天堂のハード向けソフトの供給が先細る可能性も出てくる。

27年3月期までの5年間をめどに、ゲーム開発者の採用強化など最大1000億円を投じる計画の任天堂。今後拡大が予想されるメタバースに対抗するためにも、新しい価値を生み出す必要がある。(平嶋健人)





この記事への有識者のコメント

諸富徹
京都大学大学院経済学研究科 教授

別の視点最近ニュースになった、ソニーやMSによるゲーム会社の買収の目的がメタバース対応であるように、たしかにVRゲームの登場が任天堂にとって新たな脅威となりうるのかもしれませんが、少し違うのでは、とも思います。古川社長の冷静なコメントも印象的です。任天堂はかつて、ソニーとMSによるハードウェア向上によるゲーム機能の向上合戦でふるい落とされるという報道が盛んになされました。でも結局、任天堂は「ゲームおたく」ではなくゲームに関心のない人々にゲームの楽しさを伝え、顧客基盤を拡大する戦略で成功しました。ソニーやMSと同じ土俵に乗るのではなく、異なる戦略をとるのが任天堂らしいですし、それを個人的にも期待します。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF0317S0T00C22A2000000/?unlock=1