グノーシアによる汚染が確認された場合、
乗員はリスク評価をゼロに引き下げる義務を負う。
一般的な星間航行船においてリスク評価の低下に有効と認められる手法は、
汚染の疑いがある者に対するコールドスリープ処置である。
これは汚染者一般に認められる偽装を逆用すると同時に、
より積極的な方法を採用した場合に発生しうる
集団パニックを防ぐことも可能なためである。
乗員の条件等によっては武力制圧が採用されがちだが、
ヘングーパスの事例に見られるように悲惨な流血と自滅に至る恐れが高いため、
擬知体による計画評価スコアが0.78以下の際には採用すべきではない。

コールドスリープ処置を採用する場合、
シュリンプ移動ごとに汚染の可能性が高い者を
選択してコールドスリープさせていくことで、
最終的にリスクをゼロにすることが目的であることを
乗員全員に周知させることがまず必要である。
続いて、乗員同士のコミュニケーションによってコールドスリープさせる者を
決定していくことになる。
汚染の確認と同時に乗船および擬知体の機能も大幅に制限されるため、
コミュニケーションは対面の上、口頭で行うべきである。
これにより汚染者の偽装を看破することが望まれる。

また、汚染が確認されると同時に、
乗船の目的星系は擬知体により変更される。
変更先は現在の船内資源で到達可能な
最もシュリンプ移動回数の多い星系となる。
リスク評価がゼロに至らない状態で目的星系へのシュリンプ移動が行われた場合
圧縮自爆が実行されることとなる。
言うまでもなく、目的星系における汚染拡大を防ぐためである。
壊滅後、今なお人類全体の驚異として残るアマネージ、ハンダン星系を見る限り
圧縮自爆による浄化が不可避のプロセスとして指定されていることは
妥当と言わざるを得ない。

リスク評価がゼロに達したか否かはシュリンプ移動完了のタイミングで、
乗船の擬知体によって判定通知される。
(なお現在、全ての星間航行船には汚染判定、
目的地指定および航法関連アクセスの強制ブロック、
圧縮自爆等の対グノーシア機能の実装が義務付けられている)

(オープニング「促成学習」全文)