「久しぶりに会いに来てくれた!今日はクレーと遊んでくれるの?」
クレーは喜びを隠しきれない様子で、久々に会いに来た旅人に対しそう尋ねた。
期待のこもった眼差しを旅人に向ける。旅人がクレーを連れ歩かなくなってから、それなりの時間が経っていた。その間彼女はジン団長代理の言うことも聞いていい子にしていた。またこの栄誉騎士と旅に出るために。

しかし、旅人はそんな彼女に舌打ちを返し、聖遺物を取り上げ、一言も発することなくまたどこかへと行ってしまった。

あれだけ優しくしてくれた旅人がどうして…
不安と困惑。そして悲しみに突き動かされクレーは旅人の後を追いかける。
もしかしたらさっきのは何かのは間違いで、次は優しい旅人に戻っているかも知れない。

しかしそんな淡い期待も打ち砕かれる。
クレーが見たのは、自分に昔向けられていた優しい笑顔を浮かべ、自分と同じ炎属性の法器を持った少女に、自分から先ほど取り上げた聖遺物を渡す旅人の姿。

クレーは声をかけることもできず、ただ呆然とそこに立ち尽くしたままであった…