■平井さんが苦労するのは見たくなかった

 丸山:それに、俺は平井さんをかわいがってたから、苦労するのは見たくないなっていうのもあったよね。
ソニーはホントに人材不足になっちゃってて、その極め付きが出井さんの社長じゃない。
だから、あいつがソニーに行くことになったとき、「ヘタするとお前でも(社長で)いいって言いかねねえぞ」って。
そこまで言ったんだよ。
「ややこしくなるから、そうならないようにしろ」ってサジェスチョンした。

 黒川:すごい言い方をしたんですね(笑)。にもかかわらず、そこに手を出してしまったと。

 丸山:だから、やっぱりソニーの社長っていう肩書はすごい魅力的なんだろうね。

 黒川:そりゃあ魅力的でしょう。

 丸山:でもまあ、アイツは鈍感だからよかったんだろうね。

 黒川:ええ?  平井さんは鈍感なんですか? 

 丸山:そうそう、鈍感なの。社長になった直後の何年間か、平井さんはボコボコにやられたじゃない。
ソニーのOBたちからガタガタ言われ、アナリストやら日経新聞やらも「バカだなんだ」と、みんながたたいた。
俺だったらあんなの耐えられない。
普通の人間には耐えられないって思うよ。
でも、あいつは耐えられたんだよ。
それは鈍感だってことじゃない? 

 黒川:鈍感と言っていいのかわからないですけど(笑)。