ワクワクする音楽に合わせ、次々つぎつぎに展開てんかいするゲーム。
ただ、度が過すぎると健康けんこうや生活に支障ししょうが出る「ゲーム障害しょうがい」(ゲーム依存いぞん)になってしまいます。
最近さいきん、世界保健機関せかいほけんきかん(WHO)によって「病気」と位置いちづけられたこの障害はなぜ起こるのか、そしてどう治なおしていくのか取材しゅざいしました。

脳に快感物質 依存招く
 お話をうかがったのは、国立病院機構久里浜医療こくりつびょういんきこうくりはまいりょうセンター(神奈川県横須賀よこすか市)の
主任心理療法士しゅにんしんりりょうほうし、三原聡子みはらさとこさん(46)です。
国内で初はじめてインターネット依存の外来を2011年に開設かいせつした同センターは、これまでに約やく1500人の治療ちりょうにあたってきました。
治療に訪おとずれる人の平均年齢へいきんねんれいは19歳さいだそうです。

 WHOによると、「ゲームの時間や頻度ひんどをコントロールできない」「日常にちじょう生活でゲームを最優先ゆうせんする」
「ゲーム中心の生活が1年以上いじょう続つづく」などに当てはまると、ゲーム障害の可能性かのうせいがあります。
国内には、ネット依存の中高生が約52万人いると推計すいけいされており、その大半を占しめるのがゲーム障害です。
受診者は男子が多いそうですが、女子については「研究上はコミュニケーション系けいのインスタグラムやラインなどに依存しやすいとされていますが、
受診する女子にはゲーム障害も多いという印象です」と三原さんは話します。

 何かに夢中むちゅうになる「依存行動」は、それをするごとに、脳のうに快感物質かいかんぶっしつが出ます。
毎日するうちに快感物質が出るのが当たり前となり、出ないのが異常いじょうだと認識にんしきし、脳がその行動を促うながすのです。
「ゲーム障害の子も、決してゲームが面白おもしろくて続けているわけではないのです」と三原さん。特とくに思春期ししゅんきの子の脳は、
欲望よくぼうを抑おさえる部分が発達段階はったつだんかいで、理性りせいが欲望に負けやすいそうです。

 ゲーム障害が増ふえる理由りゆうのひとつは、最近のゲームが夢中にさせる仕掛しかけをたくさん備そなえていること。
オンラインで世界中で競きそい合うランキングにより達成感たっせいかんを与あたえたり、仲間なかまとの「チーム戦せん」で抜ぬけにくくしたり。
年齢の区別くべつがないため、中高生も、社会人が参加さんかする深夜にゲームをするようになります。
昼夜逆転ぎゃくてんの生活が、体力低下ていかや食生活の乱みだれ、睡眠すいみん障害を招まねき、骨密度が低下したり、血液がドロドロになったりする人もいるそうです。

 何かに依存するのは、孤独こどくやストレスが原因げんいんという説もあるそうです。もし、依存するようになったらどうすればいいのでしょう。
 同センターでは、カウンセリング後、通院や入院、合宿などで、自分の1日の行動を振り返ふかえって考える「認知にんち行動療法」を行います。
軽い運動や機械きかいを使わないゲームをしたり、依存の恐ろしさや、人と触ふれあう楽しさを、医師いしや看護師かんごしなどから教わったりします。
 若者わかものがゲームをし続けて死亡した韓国かんこくでは、一定の時間になったらオンラインゲームをつながらなくする試こころみもされているそうです。
「ゲームをしない時間を作り、ネット以外で充実感じゅうじつかんを得えられる趣味しゅみや楽しみを増やしましょう」と三原さん。
自由な時間が多い夏休みですが、ゲームは節度せつどを持って楽しもうと思いました。