小島監督「登場人物たちも理解してない設定にすれば納得するやろ!」

https://jp.ign.com/death-stranding/39469/review/death-stranding
本作は、数時間プレイしても世界観を中々掴むことができない。
特に厄介なのが、専門用語が頻繁に登場することだ。
デス・ストランディング、DOOMS(能力者)、帰還者、ブリッジズ、
時雨(ときう、タイムフォール)、カイラル物質、ネクローシス、対消滅(ヴォイド・アウト)、
BT、BB(ブリッジ・ベイビー)、クリプトビオシス、UCA、結び目……などなど。

小島監督はかつて『ポリスノーツ』というアドベンチャーゲームで、
重厚なSF的世界観を説明するために、ゲーム内にTIPS(用語集)を先駆的に採用した。
しかし本作は『ポリスノーツ』とは、明らかに方向性が違い、
登場人物たちがこういった専門用語の概念のすべてを理解して話しているわけではない点がユニークだ。

例えば、その筆頭が「デス・ストランディング」である。
これが何なのかを登場人物の誰もがわかっていない。
「デス・ストランディングとは、あるいはBB(ブリッジ・ベイビー)とは何なのか?」、
登場人物からは様々な仮説が提示されるが、あくまで仮説だ。
いわば、本作は様々な推理合戦を登場人物から聞かされながら、ストーリーが進行するようなものなのだ。

「ブリッジズ」という言葉は、ゲームの冒頭では人の名前だと理解するだろう。
しかし次に組織名だとわかり、次に過去の遠征隊の名称にも使われていることがわかる。
「カイラル」という言葉は、
「カイラル物質」、「カイラル通信」、「カイラル・プリンター」、「カイラル・アレルギー」と、
様々な場面で使われていることに遭遇する。
このように登場する用語はつねに刷新され、意味が上書きされて拡張していく。

本作のように、ほとんどの登場人物たちが
『DEATH STRANDING』の世界観をよくわかっていないという異常事態は、
それ自体がすでに新鮮味があり、ストーリーテリングとして興味深い。

オープンワールドゲームというのは、しばしば情報を分散させることによって、ストーリーを形作る。
本作はそうではなく、意味そのものが分散されている。
プレイヤーは言葉の意味や世界の仕組みを理解するのではなく、キャラクターと共に考えていくのだ。