Nintendo Switchが発売から6年目を迎えたいま、2022年3月期の決算短信では販売台数が前年比20%減の2306万台と発表。しかも2年連続の前年割れとなったことで再び浮上したのが、強化型の後継モデル「Switch Pro」の噂話でした。
販売台数の落ち込みは、半導体不足により「需要を満たせるほど生産できない」ことと、「コロナ禍が収まってきたことで“巣ごもり”需要が落ち着いてきたこと(Netflixなども直撃を受けています)」のかけ算が大きいとは思われますが、市場の興味が「スイッチの次」に向かうのも仕方ないことでしょう。
そうした発表があったなか、古川社長は質疑応答で「将来、新しいハードウェアを発売するときにスムーズな世代交代ができるかという点は、過去の Wii やニンテンドーDS をはじめとするハードウェアの世代交代の経験を振り返っても、当社の課題の一つであると認識しています」とコメント。
どこかのタイミングで新ハードを出すのは当たり前のことで、任天堂がWiiからWii U、DSから3DSへの世代交代をしくじったのは公然の事実ですから、古川社長の回答はただの一般論ではあります。
が、海外メディアが新ハードへの移行を「大きな懸念事項」(majro concern)と誤訳したために、本格的にスイッチProが動き出したのでは?と大騒ぎに。これを受けて任天堂も決算発表の英訳バージョンを発表し、次世代ハードへの移行をスムーズにすることを保証するのは「仕事の1つ(one ou outr tasks)として誤解を解く対応をしています。
そもそもスイッチProの噂話は、2021年初めにスイッチのファームウェアから上位モデルの手がかりが見つかったことが始まりでした。
海外ゲームフォーラムResetEraで報告された新ハードの開発コード名は「Aula」。プロセッサとして「Mariko」(現行のTegra X1と同じコード名だが、後継SoCと推測)を搭載し、ハンドヘルドモード/ドッキングモード(ドックに挿したモード)にも対応。さらに有機EL画面を実装し、おそらく4K解像度がサポートされるもののドックに挿したときだけ……という、期待をそそる内容でした。
さらに、DLSS技術に対応との続報もあり。DLSSとはザックリといえば荒い画面でレンダリングするだけで高精細な画面に匹敵するクォリティで表示可能にする技術であり(学習によりアンチエイリアシング処理を効率化など)「動作は軽くて高画質」を実現するものです。
この当時、ゲーム映像技術の検証でおなじみのDigital Foundryも「もしもスイッチにDLSSが来れば、どれほどの恩恵をもたらすか」の仮想実験をノリノリで行っていたほどです。

ちょうど、NVIDIAもゲーム機向けのDLSS 2.0技術者を募集しており、信ぴょう性は高まっていました。
さらに新プロセッサにより、古いゲームも解像度やフレームレートが向上するかもしれない……と「PS4に対するPS4 Pro」のような夢がふくらんだこともあります。
そこに大手メディアBloombergが「新型スイッチが9~10月に発売」と報道。この記事には「Pro」とも強化型とも書かれていませんが、前に同誌が報じた「4K対応の可能性を含む新型スイッチ」にも触れられており、すわカウントダウンか?と盛り上がったわけです。
その後、たしかに「新型スイッチ」は発表されました。ディスプレイが大きくて画質もきれいになり、有線LAN端子がある改良型ドックが付いた「Nintendo Switch 有機ELモデル」が登場し、新型であることは事実だよね……となったしだいです。直前にTegra X1より強力なTegra OrinチップをベースにしたカスタムSoCの噂が流れたのは何だったのか、という。

https://news.yahoo.co.jp/byline/tanekiyoshi/20220515-00296121