コンピューターゲームをプレイされる方はもちろん、そうでない方も、ゲームのクオリティが昔と段違いであることはおわかりだと思います。時代に伴う高性能化により、プレイヤーである私たちは以前の何倍もの楽しさを体験し続けられますが、同時に増え続けているのがゲームの「開発費」と「開発期間」です。それらは私たちにどのような影響を及ぼしているのでしょうか?

 まずゲームの開発費といっても、落ちモノゲームのようなカジュアルなものと超大作RPGを同じには語れません。ただあくまでも参考として述べると、日本の家庭用ゲーム機の場合、開発会社の約半数が最大5000万円程度でゲームを作り、残りがそれ以上の予算を投じています。そしてひと握りの会社が、10億、20億とかけているイメージです(参考:「CESA ゲーム白書 2021」)。

 ファミコン時代の開発費は数百万円、大作でも数千万円と考えらており、単純に見るとここ30年ほどで最低でも10倍程度になっていると言えるでしょう。

 さらに海外のいわゆる「AAAタイトル」ともなると、100億円、200億円という巨額の開発費を投じて作られます。これはハリウッド映画の制作費に匹敵する規模とも言われます。

 余談ですが、『GTAV』は前作から5年後に発売されているそうで、予算とあわせて単純計算すると、のべ440人ぐらいの人が開発に携わっていたのではないかと想像されます。

●「多くの人がプレイできる」メリットの反面、「市場の衰退」招くリスクも

 さて、凄まじい儲けを叩き出した『GTAV』ですが、そこにはちょっとしたカラクリがあります。それが「平均7500円」という部分です。どういうことかと言うと、『GTAV』は「マルチプラットフォーム」と呼ばれるタイトルであり、PlayStation 3、Xbox360、PC、PlayStation 4などさまざまな機種で同じものを売っていて、販売価格はそれぞれ異なります。その当時の価格の平均がだいたい7500円、全部の機種での合計売上本数が1.7億本なのです。

 異なるゲーム機で同じゲームを売るなど、昔は考えられませんでした。例えば1997年に「ファイナルファンタジーVII」が任天堂ハードではなくSONYのPlayStationから発売された衝撃を覚えている方もいるのではないでしょうか? ハードメーカーにとって専用のゲームが出てそれが売れることは、ハードの売り上げに直結する死活問題です。他社の機種で同じゲームを出されてはたまりません。

 ところがゲームを開発する側にしてみれば、高騰する開発費を回収するため多くの人に買って欲しいわけですから、より売り上げが見込めるハードで出したいと思うのは当然です。それがさらに時代を経て「マルチプラットフォーム」という考え方につながる一因になります。

「自分の国だけで売れても意味がない」というのも同じ理屈です。ゲーム市場は世界中に広がっています。特に北米、欧州、中国は重要なマーケットです。ですから開発会社はより大きな市場に受け入れられるゲームを作るようになるのです。

 ただこうしたやり方によって、逆にゲーム市場の衰退を招いているという声があります。ゲームがマンネリ化し、同じようなゲーム、シリーズもの、リメイクが増えるからです。巨額の開発費を回収するため大きなマーケットに売り込み、そこで売れることがわかったものを量産するという方策は将来が先細りするとも言えます。しかし誰も自分で損失を出してまで冒険しようとは思わないのです。

 まとめると、私たちプレイヤーにとって開発費高騰と開発期間の長期化による影響の良い面のひとつは、ゲームのマルチプラットフォーム化です。悪い面となり得るかもしれないのは、ゲームのマンネリ化などを生んでいることです。これが本当にゲーム市場を衰退させるなら、10年後の状況は今とまったく変わっているかもしれません。ゲームがもたらす素晴らしい恩恵をこれからも受け続けられるよう、願いたいものですね。

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