吉田:第三開発事業本部のみんなが目標設定をするとき、シートの一番上に書いてあることですね。ひとつは、少なくとも自分たちはおもしろいと思うゲームを作ること。そしてしっかりと利益を出すこと。このふたつです。

 まず前者について、自分たちがおもしろいと思っていないものをリリースした場合、世界中の誰ひとりとしておもしろいと思ってくれない可能性があります。せめて自分たちがおもしろいと思えるものを作っていれば、誰もおもしろいと思わないという事態にはなりません。ここで「自分たち」としているのがポイントで、個人の「俺はこれつまらないと思うからダメです」という意見は話にならない。世界中全員がその人のコピーではないからです。自分たちのチーム、第三開発事業本部として、自分たちがおもしろいと思うものを作る。議論もするし、協議もする、「自分たちが」のためにですね。

 そのうえで、赤字は出さない。なぜなら、次を作らせてもらえなくなるからです。最悪、おもしろさに対する世間の評価が僕たちの考えていた75%程度だったとしても、黒字が出ていれば「まあまあの評価だったし、一応黒字だから次も頑張って」という状態になります。でも、僕らの考えるおもしろさが95%伝わって、評価が100点満点中95点と言われていたとしても、赤字になっていたとしたら……ものすごく少ない人が遊んで、その人たちが95点を付けてくれたということですが、次の作品は作らせてもらえなくなってしまうんです。

 だから、このふたつを絶対に達成するというのが信条です。小さい会社も経験してきていますし、食えなくなったり作れなくなったら終わりだというのもわかっていますから、お金を出してくれた人たちに利益で返す、買ってくれた人たちにその分のおもしろさを提示するのが、プロとして当たり前だと思っています。ただ、それ以外はなにをやってもいい。第三開発事業本部は“下剋上上等”ですし、アルバイトからリーダーやサブリーダーになったスタッフもいます。僕自身、契約社員で入ってからずっと正社員オファーを蹴り続けて、急に社員になって、執行役員で、取締役で……となっている人間ですから、そんな下剋上も「ゲーム業界はその方がおもしろいから」と思っています。

https://news.yahoo.co.jp/articles/97a3c6ffd08e5d548455218eb485c07d5654a47b?page=1