他の子が2ストスクーターを使うなか俺のバイクは昔ながらのスーパーカブ

婆さんが長く使うものだから丈夫なカブがいいと決めたらしい
学校が終わってみんながアクセルひと捻りですぐ発進するのに俺だけはもたもたとギヤチェンジしてて出遅れた
スクーターの簡便さを羨ましく思っていた俺はお袋に「なんでこんな古臭いのにしたんだよ、俺だけ遅くて恥ずかしいよ、こんなのもういらないよ!」

婆ちゃんは悲しそうな顔で黙って聞いていたけど何も言わなかった、そして翌年亡くなった

卒業する頃にふと気がつくと、同級生たちのスクーターはベルトが切れたりウエイトローラーがすり減ったりオイル切れで焼き付いたりして買い換えている子がいた
俺のカブは塗装が剥げたりしてたけどエンジンも車体もまだしっかりしている

冬の下校時にスノーモービル代わりにして雪の積もった階段を滑り降りて転倒したりしてもエンジンが壊れたり走れなくなったりはしなかった

その時俺は婆ちゃんのことを思い出してつぶやいた
「婆ちゃん、確かに丈夫だったけどスクーターの方が楽だったよ‥」