ツイから

『最後の追跡』(原題:Hell or High Water )鑑賞。恐らく『ノー・カントリー』以来最高の「テキサス魂」に満ちた犯罪劇にして
イーストウッド映画の風味を正統に継承した「現代」の西部劇。つまりこれ、本年度の最重要アメリカ映画の一本。とにかく黙って、必見。

まるでコーマック・マッカーシーの小説を思わせる、詩情と血の匂いに満ちたテキサスの荒れ果てた地で、短絡的な強盗三昧を繰り返す兄弟の姿に
今のアメリカの低所得白人が抱える絶望的な心情が透けて見える。これを観れば本当に、何故彼らが「あの男」を選んだかが、良く分かるよ。

まさしく「円熟の境地」に達したジェフ・ブリッジスの演技はもちろん、兄弟を演じるベン・フォスター、クリス・パインも間違いなくキャリア最高の演技。
特にこれまで演技面では、あまり評価を受けてこなかったパインも、本作で遂に、本物の「役者魂」を映画に刻む事が出来た気がする。

これ程濃厚な「絶望」がまとわりついた犯罪劇は、多分自分が知る限り「ボーダーライン」(SICARIO)以来では?と思って調べたら、脚本を手掛けた
テイラー・シェリダンって、正に「ボーダーライン」を書いた人だった!この脚本家、絶対に名前を覚えておいて損はないと思う。

間違いなく今年のアカデミー賞でも、ある種の「ダークホース」的作品になるだろうが、これが日本では劇場もDVDもスルーして、突如Netflixで視聴可能となった事実。
もう「無視」や「怠慢」は、許されない時期に来たと思う。