――梅原さんから見て、現在のeスポーツの課題には何があるとお考えですか。

>選手間の競争というよりも、むしろゲームメーカー間の争いこそがeスポーツになってしまっている部分もあると感じています。
>eスポーツを名乗る新しいゲームが雨後の筍(たけのこ)のように登場して人気を競っているわけですが、スポーツに例えたら、この現象は新しい競技が次々登場し続けているようなものなのです。
>野球だったら野球、サッカーだったらサッカーというふうに競技に求められるものは普通はほとんど動かないわけですが、ゲームの世界ではこれがどんどん動いてしまいます。
>eスポーツのプレイヤーというのは、この次々に出るゲームのタイトルに合わせた練習と対策を余儀なくされます。

ーー本来、あくまで戦うのは選手同士のはずなのですが、まずメーカー同士の争いがあるわけですね。

>だからこそお金がものすごく動くメリットもあるのですが、これは裏を返せば、流行らなくなったゲームのプレイヤーというのは、eスポーツのプレイヤーではないんですよ。
>その時そのゲーム作品が注目されている間はみんな舞い上がりますけど、人気がなくなると「あれっ?」てなる。
>eスポーツ選手を名乗っていても、それはそのゲームが流行っているときだけでしょ、という問題が生まれてしまうんですよね。
>つまり、選手にとってみればeスポーツというのは長続きしにくいし、つぶしがきかなさすぎる。
>今はまだこの問題は浮上していないですが、そのうち無視できない問題になってくるでしょうね。

――選手は大きなリスクを強いられているわけですね。

>そうですね。だから「ゲームさえうまきゃいいんでしょ」って言っている人達は、そこを考えていないと思います。
>どんなゲームにも対応できるほどうまい人がいれば別ですけど、現実には格闘ゲームだけとか、パズルゲームだけうまいという人しかいませんから、とてもゲームがうまいというだけでは、通用する問題ではありません。

――同じ格闘ゲームでも、例えば「ストII」が「餓狼伝説」(SNK)になっただけでも全然違いますものね。

>それだけでも全然違います。そもそも格闘ゲームというジャンルそのものがなくなる可能性だってあるわけです。
>自分は格闘ゲームでさえあればなんとかなる自信はあるんですけど、それ以外だとさすがにeスポーツプレイヤーは名乗れないですね。
>プロゲーマーというのはそういうギリギリのところでやっているんです。