小島秀夫
@Kojima_Hideo

「PW」発売から14年。まだ40代半ばの頃。多くのゲーム会社がガラケーのアプリ開発へとシフトを始めた頃。
MGS4制作の後、独自エンジンの必要性を痛感。垂直方向へのゲームの飛躍はエンジン完成後に。
それまでの間、水平方向に進化するMGSを提案しようと企画したのが、PW。
当初はMGS5PWだったが海外のマーケから猛反発をくらい、連番を断念。PSPなので対象年齢を小中高生に引き下げる。
若年層を発掘して親子二世代でのファン獲得を狙った。

「何故、核兵器が存在するのか?」を解くために、“抑止力”と“かりそめの平和”をテーマにした。
軍隊を持たない国、“コスタリカを舞台にいつかはやりたい”と考えていたので、PWで使うことに。
若い世代のために、世界観はそのままにキャラクターや物語のトーンを少年漫画誌風にあえて下げた。
水城さん、杉田さん、大塚芳忠さんはPSP世代の息子の意見を取り入れてキャストした。

ただPSPなのでこれまで通りワールドワイドでのヒットは望めない。その為、制作費はかなり抑えるしかない。
モーションキャプチャーもハリウッドの作曲家も使えない。そこで“バンドデシネ”のデジタルアニメ手法を採用。
作曲は社内のコンポーザーに。"Calling to The Night"が良かったので本田君にメインの挿入歌も依頼。
メロディやパーツを幾つもの用意して貰い、それらを組み合わせ、時間をかけて一曲ごと作った。
「恋の抑止力」は企画当初からタイトルだけは頭にあった。
ヴォーカルは"Calling to The Night"のNatasha Farrowを起用したかったが、日本不在。事務所の社長であるドナさんに決定。

MGS3ではカモフラ柄をファッション・アイコンにした。
PWでは70年代ヒッピー文化にもなったピースマークをアイコンに添えた。核兵器、平和、抑止力、革命、潜友。
これらをアイコンとしてキャラクター、物語、デザイン、トレーラー、ファッションの細部にわかりやすく埋め込んだ。
PSP市場ということで、海外からは認められなかったナンバリングのないMGSだが、
PSPだからこそ出来た若者たちに向けた新しいMGSだと言える。