【安心快適の追求B……ハングマンズノットのチューニング】

○ハングマンズノットの挙動
定型実行直前のスタンバイの状態を、ロープが首に締まり始めるポジションとします。そこで、ロープのかかり
方、結び目の位置の最終確認をします。そこから足場を外したその直後、全てが決まります。それゆえに、そ
の瞬間、その直後を征することが安心快適の最大のポイントとなります。
実行してからロープが完全に締まる過程で、結び目の位置は落下します。ロープと接した頸部もほぼ同じ距
離落下します。解明したいのはこの過程です。鍵はロープの太さです。この過程を直径30mmと10mmのロー
プの場合で、ざっくりとした相対比較で考えます。30mmは日本の絞首刑の規格であり、現実にはありえない
凶悪な太さですが、あくまで細いロープのと対比のメージで考えてください。

 1)直径30mmの場合  
   頸部落下に伴い輪っかは締まり始めるが、締まる速度は遅い
   →頸部はロープの抵抗を受けて落下速度を下げる
   →それと同時に、頸部は一方向に締まる輪っかに巻き上げられる
   →頸部全体としては回転しながら緩やかに落下することになる
   →その過程で頸部の真後ろにあった結び目は大きくずれる
   →緩やかな速度で下がり切るので、輪っかは最後まで締まりにくい

 2)直径10mmの場合  
   頸部の落下に伴い輪っかは締まり始めるが、締まる速度は速い
   →そのため、結び目は、頸部の真後ろのまま、落下する頸部を追いかけるように同調する
   →その間、輪っかは締まり続ける。
   →速い速度で下がり切ったところで、一気に締めを完遂

落下とか速度とか言ってますが、ほんの瞬間の出来事です。しかしハングマンズノットのパフォーマンスとし
てはそれが全てであり、直径数ミリの違いが「安心快適」において大きな鍵となってくるはずです。ここではよ
り高速のハングマンズノットが求められているのです。

○擬音によるイメージ化
太いロープと細いロープを擬音語で表現してみます。主観的でばかばかしいかもしれませんが、チューニング
ならありだと思います。イメージトレーニングです。

 1)直径30mmの場合  「グリン・ムギュウ」   
    頸部がロープに巻かれてグリンと回転し、その直後ムギュウと圧迫される
 2)直径10mmの場合   「シュッ・キュッ」  
    頸部がストッと落ちると同時にシュッと結び目がまっすぐついてきて、その直後キュッと締まる

○チューニング
ここで定番のクレモナ12mmを考えます。その信頼性は今更揺らぐことはありません。しかしここではその先
に踏み込みます。ハングマンズノットを考えればやや太すぎてダルな印象がありましたので、ワンランク細い
10mmを検討する余地はありました。2mmの差ではありますが決して小さくはありません。両者間で1)2)の
相対比較は可能だと思います。10mmが12mmに対して2)の優位性を有し、かつ強度的に問題がないなら、
10mmを積極的に選択する理由になります。私は、10mmによってハングマンズノットの感応性を向上させるこ
とで、全体の挙動を百発百中で征する自信を深めることができると思います。定型ハングマンズノットへの信
頼性向上は何よりの安心快適です。