【安心快適の追求C……最速ハングマンズノットをめざして】
ハングマンズノットは締まる速度が速くなければなりません。スピードが足りないと、頸部がロープの締まりに
巻き上げられる形で回転し、結び目の位置がずれるからです。スピードが十分であれば巻き上げられることな
く、頸部と結び目が同時落下します。頸部がロープに巻き上げられるのではなくすべり落ちるイメージです。そ
れと同時に輪っかは締まってるのです。下がり切ったところで締めは一気に完遂します。
ハングマンズノットのチューニングは最速をめざすためのものです。そしてその一番の鍵はロープの太さでし
た。>>25ではそれを中心に論じましたが、今回は最速をめざすチューニングメニューを整理したいと思います。

─── 最速をめざすチューニングメニュー ───

○加える力……全体重のみ(自由)
実行直前のスタンバイは、ロープが張った状態で、輪っかの部分は締まる直前の状態です。そこから足場を
外し、全体重をかけます。それ以外の力は不要です。後は自分の体重とハングマンズノットが全てやってくれ
ます。お任せでいいのです。
最速をめざすからといって、飛び降りはしてはいけません。それだと、ロープをたるませた状態ですから、頸部
が下がり切る直前まで、輪っかはまだ全然締まらないことになります。これは非常に危うい状態なのです。下
がり切った瞬間、大きな激力がハングマンズノットに働きますが、ハングマンズノットには抵抗がありますので、
ハングマンズノットの能力を超えた加速度が要求されたらロックがかかったように止まると思います。一旦ロッ
クがかかった後、じわりと締まっていくだろうと。その時は頸部は一旦底をつけて、それ以上すべり落ちること
はないので、ロープに巻き上げられるように回転して締まることになるでしょう。結果だけ整理すると、最初の
激力で首の前の方だけを打ちつけて、その後結び目がずれる形で締まる、ということです。飛び降りはハング
マンズノットの性能を超えており、チューニングとしては逆効果で失敗です。今一度ハングマンズノットのある
べき挙動を確認してください。

○ロープの太さ……10mm  >>25 参照

○ロープの種類……クレモナ
強度に優れ、引っ張っても伸びが少ないのが売りの首吊り用ロープです。化学繊維のない時代を考えれば、
首吊りの歴史においてクレモナがいかに大きな存在か理解できると思います。しかしもともとはトラックロープ
であることを忘れてはいけません。つまりすべりにくいということです。しかし、すべりやすくする工夫はできま
すから、すべりにくさでクレモナの評価を下げる必要はありません。それに、最速ハングマンズノットをめざし
て定番の直径12mmから10mmにサイズを落としても強度的に大丈夫です。ちなみに、クレモナよりすべりや
すいロープは他にもありますが、そういうロープは引っ張るとかなり伸びてしまいます。これは最速をめざすハ
ングマンズノットにとっては無視できないマイナス要因です。いろいろチューニングする立場から総合的に考え
ると、クレモナの首吊り用ロープとしての安定感はずば抜けていると思います。

○すべりの工夫……ベビーパウダー
すべりやすくする工夫としてはベビーパウダーがいいです。かなりよくすべるそうです。赤ちゃんの香りでリラッ
クスした気分になれるとかで、快適性のポイントも高いです。香りが苦手なら無香料もあります。オイル関係は
ロープの中に染み込んでしまいますが、ベビーパウダーは表面に徹するところがいいです。
かけるのは実行直前。かける箇所は、まず、結び目の中を通るロープ部分です。これで結び目がよく走るよう
になります。それともう一箇所、首とロープが接する部分です。頸部が、締まるロープに巻き上げられないで、
逆にすべり落ちやすくするためです。ここまですべりやすさに配慮するのですから、屋外では雨天中止は当然
です。首周りの汗にも注意したいです。

※以上の考察は定型ハングマンズノットの信頼性を最高まで高める試みでありますが、手間のかかることで
はありません。それにノーマルタイプでも問題ありません。なのでこれによって定型ハングマンズノットの難易
度が上がることはありません。