【首吊りの基本テキストBC……定型・非定型の評価】

高木徹也『なぜ人は砂漠で溺死するのか?』より

B定型的縊死の評価 
「心臓から頚部、すなわち首を通って脳に至る重要な動脈は、前側の左右にある総頚動脈、首の奥の左右にある
椎骨動脈の4本がある。定型的縊死では、自らの体重でこの4本の動脈が一瞬で遮断されるため、ほぼ即死する。
しかも4本の動脈と4本の静脈が一瞬で止まるから、顔のうっ血もない。一瞬で心停止するから、失禁や射精な
どの生体反応も起きない。だから定型的縊死では、体が非常に清潔な状態に保たれたまま死ぬ」

C非定型的縊死の評価
 「縊死の99%を占める非定型的縊死は、苦しい。というのも、4本の動脈のうち奥にある椎骨動脈の2本の血流
がまだ生きているから、痛みや苦しさを感じるだけの意識が脳に残っているからだ。しかも、椎骨動脈で頭に血流
が流れ込む一方、すべての静脈は簡単に遮断されてしまうから、一度頭部に入った血液は首から下に降りていか
ず、顔はうっ血して真っ赤に膨れあがる。苦しいから舌が飛び出す。窒息してもすぐには心停止に至らないから、失
禁や射精をする…『首吊りの死体は苦しげで、醜く、汚い』、こうしたイメージはすべて非定型的縊死によって形成
されたものだ。」