水口 体験をパブリッシュできるのはゲームだけなんですよ。映画などを始めとするほかのメディアって、体験というよりも情報ですよね。
僕は、ゲームは唯一体験できるメディアだと思っていて、その体験の解像度が上がってきているという現実がある。「こんなすばらしい世界はないな」と思っていて、新しいテクノロジーを待ち続けながらモノ作りをしている状態ですね。
 でも、もっとほしいんです。
この先テクノロジーはもっともっと進化してもらわないと、頭の中のイメージが実現できないので、最新のテクノロジーを活用しながら、つぎのテクノロジーを待っているという状況が続いているのだけれど……。

――なるほど。テクノロジー面にフォーカスさせていただくと、テクノロジーが進化してやりたいことがどんどん実現できてきているとおっしゃっていますけど、
いま「とくにここが変わってほしい」と期待するところってどこですか?

水口 じつはまだまだたくさんあります。

――あら、そんなに。ある程度は望みに達しているわけではないんですね。

水口 ぜんぜんないですね!

――(笑)。なかなか貪欲でいらっしゃるというか……。満足度のパーセンテージでいうと、どのくらいですか?

水口 まだ50%もいってないと思う。

――ええ!?

水口 ハードウェアの進化はまだまだ必要で、いまのジェネレーションのマシンももちろんそれぞれみんなすごいんだけど、もっと表現力が欲しい。

――表現力はまだ足りないですか?

水口 ぜんぜん足りないですね。

――個人的には、もう十分かな……とも、少しは思うんですけど。

水口 “リアルなものをリアルに表現する”という点ではとてもいいんですけど、そこから先なんですよね。リアルじゃないというか、リアルを超えたというか……。
抽象的なものも含めて、人間の想像力から生まれてくるような、現実では見たことがないものを作ろうとすると、まだぜんぜんダメなんです。
あと、VRやARの未来を考えたときに、まだぜんぜんパワーが足りない。

――『Rez Infinite』で、水口さんがやりたいことはある程度実現したのかなと思っていたんですけど、そういうわけでもないんですね。

水口 いまの段階のテクノロジーで実現できることに対する満足感はありましたが、やっぱり足りないんです。
もう少し正確に言うと、『Rez Infinite』が終わってから、「あれがしたい」、「これもしたい」という思いがどんどん出てきた。そういう意味では、ぜんぜん足りないです。

――足りないというのは、おもに表現力の領域が大きいのですか? 視覚とか聴覚とか触覚とか……。

水口 そうなんですけどね。僕はもっとみんなが見たことがないようなものとか、体験したことがないような経験を作りたいんです。
それをやるにはまだ非力なんですよね、コンピュータが。

――頭の中にビジョンがあるけど、それをアウトプットする術がない状態みたいな?

水口 頭の中のビジョンをアウトプットする術はあるのですが、それはすごいお化けみたいなすごいマシンじゃないとできなくて、
それをコンソールで実現しようとなると、まだちょっと無理があるということはありますね。

https://s.famitsu.com/news/201807/10160586.html